ある日、夢を見た。

「ここは一体どこなんだ……?」
俺は見覚えの無い通路に立っていた。やけに冷たい空気。薄暗い蛍光灯。人の気配は無く、静寂が広がっていた。
しばらくして、俺は理由も無く歩き始めた。何も考えず、ひたすら真っすぐに通路を歩き続けると、そこには階段があった。

「やけに長い階段だ……」
歩いても歩いても階段が続く。まるで俺を試しているような、そんな長さだ。しかし、それでも俺は引き返さずに歩き続けた。
30分ほど歩くと、遠くの方に開けた空間が見えたような気がして、俺は必死に走った。
その後、俺が目にした光景は意外なものだった。

「駅のホームだ……」
誰も居ない、何も無い、空間だけがそこに広がっているように感じてしまう程に、そこは静かだった。

時刻表は無く、駅名もかすれていて読めなかった。このまま待てば電車が来るのだろうか。それとも、引き返すか。
しばらく待って電車が来なかったらどうするのか。仮に来たところで、その電車はどこを目指しているのか。俺は迷っていた。すると、
ピーン……
ポーン……
パーン……
ポーン……
突然の事だった。アナウンスが始まったのだ。俺は驚きながらも耳を傾けた。
まもなく4番線に電車が参ります。
その電車に乗ると恐ろしい目に遭います。
このアナウンスを聞いた時、俺の中の好奇心は恐怖心に打ち勝っていた。遠くの方からは微かに電車の音が聞こえる。

電車はすぐに来た。
この電車に乗ると恐ろしい目に遭うらしい。それでも俺はこの電車に乗ると決意した。いざとなれば目を覚ませば良いのだから。
電車に乗ると、そこには顔色の悪い乗客が2人。その生気の無い顔が酷く不気味で、俺は2人の表情が目に入らないように、車両の前方の席に座った。
発車してしばらくすると、アナウンスが流れた。
次はひき肉、ひき肉です。
ひき肉とは一体どの様な駅なのだろうか。そんな事を考えていると突然背後から激しい機械音と女の悲鳴、そして何か柔らかい物がグチャグチャにすり潰されるような音が聞こえてきた。
まさか、いや、そんなはずはない。落ち着け。落ち着け。落ち着け。
……落ち着ける訳が無い。俺は慌てて目を覚まそうとした。しかし、どうやっても目が覚めないのだ。
どうにかして目を覚まそうとしていると、再びアナウンスが流れた。
次はえぐり出し、えぐり出しです。
やめてくれ。早くこの夢から覚めていつもの日常に戻してくれ。
しかし、そんな願いも虚しく背後から男の悲鳴と、眼球がえぐり出される音が聞こえてきた。
確か乗客は2人だった。つまり、次は俺の番だ。

「嫌だ…… やめてくれ……」

「目よ、覚めてくれ……!!」

「頼む……!!」
ピーン……
ポーン……
パーン……
ポーン……
次は……
ヤンキーの良くないノリ、ヤンキーの良くないノリです。
おわり